■ 46番・47番に、セラミックが入った日
前回の【治療の記録⑧】で、46番・47番の歯の型を取ってもらいました。今回は、その続きの日です。
この日を、私はものすごく楽しみにしていました。
前回の治療で、一気に2つの銀歯が、口の中からなくなったんです。プラークや虫歯で黒くなっていた銀歯の中まで綺麗にしてもらって——そこへ、いよいよセラミックが入る。想像するだけで、ワクワクしていました。
そして、入れてもらった奥歯を見たとき。ツルッと白く、綺麗に並んだその歯に、本当に気持ちがよくなりました。
でも——この「ツルッと綺麗」の裏側には、私の想像をはるかに超える、丁寧な工程がありました。
この日撮ってもらった写真は、なんと298枚。これまでの治療で、2番目に多い枚数です。しかも、たった2本の歯のために。
■ まず、ラバーダムから。
この日の治療も、ラバーダムから始まりました。
ラバーダムは、治療する歯だけを出して、口の中のほかの部分と隔離する、ゴム製のシートです。唾液の細菌が入らないようにするためのもの——つまり、治療の精度を守るための、大切な“下ごしらえ”です。
(※ラバーダムについては、「ずっとあった違和感が、消えた日。——根管治療のこと。」で、くわしく書いています。)
セラミックを歯に接着するときは、少しでも唾液や湿気が入ると、接着の力が落ちてしまうのだそうです。だから、この一手間を惜しまない。
——こういう丁寧な治療を受けたくて、私はこの歯科を選びました。その“入り口”が、このラバーダムなのだと思います。
■ 何度も、付けては削って。——298枚が語ること
技工士さんが作ってくれたセラミックインレーを、先生がさらに微調整しながら、つけてくださいました。
歯に付けて、確認して、外して、また少し削って——。何度も、何度も、ピタッと合うまで、その繰り返しです。
たとえば、噛み合わせ。みなさんも、経験があるかもしれません。「カチカチ噛んでください」と言われて、紙を噛んで、高いところを削ってもらう——あれです。上下の歯が、ちょうどよく当たるまで、何度も確認しながら、ていねいに調整してくださいました。
そして、何度も調整したあと、先生が最後の確認を、私に尋ねてくださいました。
ところが——長年、噛み合わせが良くなかったせいか、私は自分では、どうなったら“うまく噛めている”のか、よく分からなかったのです。そのせいで、さらに、時間をとらせてしまいました。
先生が何度か直してくださって、カチカチ噛んでついた印を見せてもらったとき。——ああ、これが“噛めている”ということなんだ、と、やっと思えたのでした。
付けて、確認して、削って、また付けて。——この地道な繰り返しが、あの298枚の写真に、そのまま残っていたのです。
たった2本の歯のために、これだけ。そう思うと、胸が熱くなりました。
■ ひとつの隙間も、見逃さない。
セラミックインレーの形が、ぴったり合うまで調整できたら——次は、歯につける前の確認です。
シリコンを使って、インレーが歯にあたる面が、均一に当たっているかを確かめます。接着する前に、“ちゃんとフィットしているか”を、しっかり見てくれるのです。
このあと、接着するまでにも、こまかな下準備がいくつもありました。
そして、接着。——でも、ここで終わり、ではありません。
接着したあと、色のついた液を使って、インレーと歯のつなぎめに、隙間がないかを確認します。さらに、フロスを通して、引っかかりがないかも、最後にチェックしてくださいました。
なぜ、そこまで見るのか。
少しでも出っぱった段差があると、フロスを通したときに引っかかってしまう。逆に、凹みがあると、そこにプラークが残って、歯周病の原因になってしまうのだそうです。
だから、つなぎめが、なめらかに、ぴたりと合っているか——ひとつの隙間も見逃さずに、確認してくれる。
“白くてきれいなセラミック”の、その下で。こんなにも細やかなことが、起きていたのです。




治療の工程の、ほんの一部です。書ききれないほど、細かい工程がありました。
ひとつ、思い出したことがあります。いつの治療のときだったか、正直、はっきりとは覚えていないのですが——治療の途中で、水が口から顔をつたって、ポタポタと落ちてきたことがありました。
でも、先生が集中して、一生懸命私の為にしてくださっていると思うと、「水が垂れています」と、どうしても声をかけられなかったのです。ずっと、我慢していました。
あとで先生が気づいて、タオルを持ってきてくださったとき——私は思わず、「寝ていて気づきませんでした」と言ってしまいました。
今思えば、おかしな遠慮でした。でも、それくらい、先生はいつも真剣でした。
■ たった2本の歯に、これだけ。
すべての治療が終わって、綺麗に入った歯を見ました。
右下の奥歯——半分だけ見ると、もう、銀歯がひとつもありません。
思えば私には、“銀歯のない奥歯”の記憶が、ないのです。気づいたときには、もう銀歯でした。だから、白い歯が並んだ奥歯を見るのは、これが生まれて初めて。——その光景に、ただただ、感激しました。
嬉しくて、家に帰ってからも、何度も鏡で口を開けては、その歯を見ました。

たった2本の歯に、これだけの手間をかけてくれた先生。そのおかげで出会えた、生まれて初めての、白い奥歯。
——この歯を、一生、大事にしたい。心から、そう思いました。
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